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モトと二人で会うなんて何年振りだろうか
仕事が予定よりかかっってしまい
約束した時間よりもかなり遅い時間になってしまいました
でもモトは嫌な顔一つせずに待合わせ場所に来てくれました
飲み始めてやはり出るのは思い出話
出会いはもう10年以上前に逆上ります |
モトは僕と同期です
カムカムミニキーナに同じ時期に入りました
と言っても僕は役者で、モトは小道具スタッフでした
小道具スタッフとしてのモトはとても優秀でカムカムに入って初めての本公演で世話になりました
僕が使う小道具を持ってきて
「サイズはどうですか?」
「持ちにくくないですか?」
と物静かながらも親切で丁寧な仕事ぶりを覚えています
スタッフ元尾は役者達から好評でした
その寡黙な立ち居振る舞いから女性達にも人気があったと思います
ある日、その小道具の元尾さんが稽古場にやってきました
そしてジャージに着替え出したんです
なんとその日からモトは役者になりました
実はモトはずっと役者をやりたかったらしいのですが、いきなり役者をやる勇気はなく、それで小道具を作りながら芝居をする自分を夢見ていたそうです
稽古ではエチュードと言う即興の芝居をします
あの寡黙なモトオさんがどんな芝居をするのか?
みんな固唾を飲んで見守っていました
なんとモトオさんは滑舌が悪かったのです…
ここでモトがカムカムに来るまでの道程を書いていきたいと思います
モトがビールを飲みながらポツリポツリと話すには…
モトは長崎出身です
大学を目指し受験する訳ですが、彼は広島の公立大学の夜間学部に合格しながらもそれを蹴って浪人してしまいます
なんで行かなかったの?と聞くとモトはモゴモゴと言いました
「ぅん、気になってた女の子が、ぅん、広島の大学に行くって言うから受けたん、ぅん、だけど、違う大学だから止めた」
よく意味が分かりませんでした…
そもそも何故同じ大学を受けなかったのか?
そして違う大学でも同じ広島にいればなんかしら彼女と接点を作れたんじゃないのか?
更には好きなのではなく、気になる程度で何故そこまで思い切った行動に出て、それをまた思い切って止めたのか?
謎は深まるばかりですが先に進みました
一浪してモトは再び受験をします
見事に国立の佐賀大学に合格です
しかしモトはこれまた蹴ってしまいます
センター試験の足きりで志望校を受けられなかったからだそうです
と言っても国立大学を蹴るなんてモッタイナイなぁって普通の僕は思いました
モトは意志の強い人間なんでしょう
言い方を変えれば頑固です
そのまま二浪目に突入し、結局モトは大学には行きませんでした
なんと引き籠もってしまうのです
勝手に「波瀾万丈」です
しばらく家に籠っていた事を心配したモトの親御さんが東京に行く事を薦めます
東京にはモトのお姉さんがいました
こうしてモトの東京ライフが始まります
閑話休題
ここまでの話をモトは怒濤のように話しました
元来話好きなのでしょう
そしてモトは話ながら怒濤のように単語を噛んでました
「話好き」と「話上手」は決して隣合わせではないのです
モトの東京ライフはバイト三昧で過ぎていきます
いつまでも姉の元で世話になる訳にはいかない
貯金をして一人暮らしをしなければ
男として、俺は自立しなければ!!
………いつの間にかモトの自伝のようになってしまいました
しかしお酒を飲みながらモトの半生を聞いてる内に、一人の青年の立志伝を紐解いているような気分になったのは確かです
ですから今からタイトルを付けます
「モトがゆく」
バイトに明け暮れるモトはいつしか東京にも慣れていました
その頃のモトの心を奪ったのはテレビでした
モトは「イカすバンド天国」通称「イカ天」にハマッていました
「イカ天」とは、素人のバンドが十週勝ち抜きを目指す音楽番組で、その当時まだアマチュアだったBEGINやBLANKEY JET CITY、FLYING KIDS等を輩出した伝説の番組です
キラキラと輝く音楽や夢を追う若者達が溢れるテレビの画面にモトは何を見たか!?
三宅裕司である
「次のバンドはこのバンドだい!!」で人気を博したアシスタントの相原勇でもなく
司会の三宅裕司さんだったのだ
奇跡的な感覚と言わざるを得ない…
しかし、この事が僕らとモトを結ぶ奇跡を生む!!
モトは三宅裕司さんの主宰する劇団スーパーエキセントリックシアターに観に行くようになるのである
その時の事をモトはこう振り返る
「ぅん、三宅裕司さんが、やっている、ぅん、どんな芝居だろう?、ぅん?、って思って」
ついにモトは紆余曲折しながらも芝居に出会ったのである
それからの動きは目覚ましい
モトは週二日を観劇に費やすのである
モトは言う
「ぅん、ほら俺、水曜と日曜が、ぅん、バイト休みだった、ぅん、でしょ?」
こっちからしたら「知らねぇよ!!」である
しかしこちらのそんな気持ちもお構いなしにモトは芝居を観まくる
休みの度に劇場に行く
そして遂にカムカムミニキーナに辿り着くのである
街道は晴れている
モトがゆく
完
いやいや「完」じゃないわ
正直モトの話はずっと面白かった
過去の恋愛話も最高だった
初めての海外が失恋傷心旅行だった事も、行き先がベトナムだった事も、現地で花売りの少女と仲良くなったエピソードも伝えたい
カムカムの話をしてる時に「八嶋さん」と言おうとして噛んでしまい「八嶋様」と結果的に最上級の呼び方をしてしまった事を始め、幾つもの奇跡的な噛み方も伝えたい
そもそも滑舌の悪いモトが松村さんの演出で「しゃくれた感じでやって」と言われ演じた方が滑舌良くなる意味不明さも掘り下げたい
しかし今回はここまでにしときます
最初の方に書いたようにモトは頑固です
気難しい所もあります
自分に似てるなぁなんて思う部分も多いです
聞くとモトは姉二人の末っ子長男で僕と全く一緒の環境でした
なるほどなぁ |